間違えたくない建設業での勘定科目
正しく会計処理を行うことは、会社の経営における基本であり、非常に重要です。建設業における会計基準や勘定科目には、一般的な会計とは少し異なる特殊なものが用いられています。そのため一般的な経理業務に慣れている人でも、建設業の会計に携わると戸惑うことが多いようです。ここでは、建設業で使われている勘定科目などについて解説します。
1.建設業会計が特殊な理由
建設業会計が特殊であることには、この業界ならではの事情が関係しています。
建設業では、工事の開始(受注)から終了(納品)に至るまでの期間が、製造業などと比べても長期間にわたるケースが多くあります。
そして、納品するまでには、経費として多額の材料費や人件費が発生します。
そのような状況でも受注業者が注文者から代金を受け取るのは、基本的には工事が完成して納品に至った時点です。
一般的な会計で、受注業者が売上を計上するのは、納品が完了して代金を受け取った時ですが、これをそのまま建設業の場合に採用すると、受注してから売上を計上するまでに数年間かかるというケースも出てきてしまいます。
そうなると受注業者は、ある決算日の時点において、かかった費用に対してどの程度の売り上げがあり利益が出ているのか、あるいは赤字になっているのか、判断することが難しくなってしまうのです。
このような理由から、建設業の場合には期間損益計算を行うことが認められています。
2.建設業会計の特有の勘定科目とは
期間損益計算とは、工事が完成途中であっても決算日に売り上げを計上し、利益などを計算することです。また、この考え方を、工事進行基準と呼びます。
一方、工事が完成した時に売り上げを計上し利益を計算する場合は、工事完成基準といいます。
建設業の行う工事であれば、どのようなものでも工事進行基準が認められているわけではありません。
工事進行基準による会計が認められるのは、工事の進捗した部分について「成果の確実性」が認められる場合のみとされています。
この「成果の確実性」というのは、工事による収益の総額、原価の総額、決算日における工事の進捗度の3つの要素について、信頼性をもって見積もることができることをいいます。
これが満たされない場合には、工事進行基準ではなく工事完成基準が採用されます。
また、工期が短い契約の場合にも、工事進行基準が採用される必要性は薄くなることから、工事完成基準が適用されます。
このように建設業には、他の業種とは異なる「工事契約に関する会計基準」というものがあり、ケースによって適した基準が採用されています。
他に、用いられる仕訳や勘定科目にも他業種との違いがあります。
3. 建設業会計の勘定科目
建設業会計における特殊な勘定科目について紹介します。
1.損益計算書における建設業会計の勘定科目
建設業会計における損益計算書には「完成工事高」「完成工事原価」「完成工事総利益」という勘定科目があります。
これはそれぞれ、一般的な会計でいうところの「売上高」「売上原価」「売上総利益」と同じような意味を表します。
但し、用いられている会計基準によって考え方に少し違いがありますので、注意が必要です。
例えば、工事完成基準を用いていた場合の「完成工事高」は、「契約した工事が全て完成して、引き渡しについても完了した金額」を表します。
しかし、工事進行基準の場合には、「全工程のうち、期中に完成した工事部分に関してのみ」の数字になります。
「完成工事原価」と「完成工事総利益」についても同様の考え方です。
2.貸借対照表における建設業会計の勘定科目
貸借対照表においては、「完成工事未収入金」、「工事未払金」、「未成工事支出金」、そして「未成工事受入金」という勘定科目があります。
「完成工事未収入金」というのは、一般会計における売掛金とほぼ同じものです。
「当期に工事が完成しているが、代金の入金は翌期」というものについて使います。
資産の欄に計上します。
「工事未払金」は、買掛金とほぼ同じ意味です。
「当期に工事に関する費用が発生しているが、そのお金の支払いは翌期」のものについて使います。
工事に関する費用というのは、材消費や賃金、外注費などです。負債の欄に計上します。
「未成工事支出金」は、一般会計における仕掛品に該当します。
「当期に工事に関する費用が発生しているが、それに対応した工事の完成品の引き渡しは翌期」の際に使います。
発生した費用をそのまま損益計算書に計上すると、売上の計上は翌期になるため、費用と売上の対応関係が崩れてしまいます。
そのため「未成工事支出金」として、とりあえず資産に計上します。
そして、翌期に売上を計上した時に、「未成工事支出金」を費用に振替えます。
「未成工事受入金」は、前受金に該当します。
「当期に工事に関する手付金や中間金を受け取っているが、完成品の引き渡しは翌期」という時に使います。
未だ完成していないものについて、先に代金を受け取っていますので、この科目は貸借対照表上の負債の欄に計上します。
紹介したように、建設業においては特有の勘定科目が使われています。